2010年9月10日金曜日

アクセシビリティJIS 改正の概要と押さえるべき点(1)―今までとの違い

アクセシビリティJIS 改正の概要と押さえるべき点(1)―今までとの違い

前回の「プロローグ」から2週間近く経過しましたが、やっとシリーズ開始します。まずは今までのものとどう違うか?と言う点から説明したいと思います。

2004年版と今回の2010年版は全くの別物と考えた方が良い

2004年に公開された「JIS X 8341-3:2004」、それから6年が経過し新たに改正された「JIS X 8341-3:2010」。改正という名前から、2004年のものを分かりやすくしたとか、使いやすくした等との想像をしがちですが、「まったくの別モノ」と考えた方が正しいです。

2010年版は WCAG2.0 がベースになっている

2010年版は W3C から出されている WCAG 2.0 (Web Content Accessibility Guidelines 2.0) をベースとして考えられており、チェックする項目についても全て項番まで一緒になっています。違いといえばガイドラインの補足に2ページにまとめられていますが、基本的には言い回しの部分や、説明を記述する場所が違う程度で、チェックする項目についての違いはありません。

逆に 2004年版との違いは延々と14ページに渡って記載されています。2ページに対して14ページなので、2004年と比較する事自体、あまり意味の無いものとなっています。

なぜ 2004年版から大きく変わったのか?

いくつか理由があります。

・世界標準に合わせた方が運営しやすい

グローバル企業の場合、日本ではJIS、海外ではWCAG、といった具合に対象とチェック内容が違うと、国々での運用方法が変わってきます。統一させた方が運営はしやすいですし、後半の説明に出てきますが、チェックツールをワールドワイドで同じものが利用できるという点もメリットとなります。

・技術的に細かく書かれていた為、進歩の激しいWeb業界で陳腐化していた

2004年版はフレームやアニメーションGIF等最近ではあまり使われていない技術について細かく記載されていた為、最近ではあまり意味をなさなくなっていました。2010年版では陳腐化しないように技術的な表現は無くしてあります。

・抽象的な表現が多く、明確なゴールがない

「適切な文章をいれること」といったような抽象的な表現が多く、人によって OK/NG が変わるような記載となっていた為に点数化しづらく、ゴールを決めにくいという事がありました。2010年版では達成基準を設け、ゴールを決めやすくなっています。

こういった理由に加えて

・達成基準を設けることで、達成宣言を出せるようになった

どこまでやったら合格か、第三者にも判断できるようになりました。ただし、まだ達成宣言に関する詳細な仕様は確定していません。このあたりは後日公開される予定です。

・チェック手法が具体的になったことで、自動チェックツールでチックできる項目が増えた

Webサイトの運用は現在では複雑化してきていますし、ページ数が数千~数万といったサイトも多く存在します。それらを目視で確認する事自体困難ですので、ツールによるチェックが必須となります。その為、チェック手法を具体的に記載してあり、チェックツールが作り易くなっています。今後はチェックツールによる運営が標準となっていくことでしょう。

難しくなった点もあります

メリットばかりかというと、そうでもありません。今回の改正で分かりづらくなっている点もあります。

・技術的に陳腐化しないようにできるだけ技術名は使用せずに説明してある

そのため分かりづらい表現の部分が多々あります。これらは今後、別途具体的な記述方法などを記載した技術書が出てくる事になっています。

これからアクセシビリティ対策される方へ

まずはこの「JIS X 8341-3:2010」を読み、いきなり自分のサイトを目視で確認するのではなく、チェックツールを探してください(ここ、宣伝になりますが、弊社では「IBM Rational Policy Tester OnDemand」を採用しており、導入支援サービスを実施しております)。次に、どこまでやるのか?最初はミニマムスタートから始めるとして、何を優先とするか?といった点を決めます(このあたりも弊社にてコンサルティングさせていただいております)。チェックツールがあればチェックは簡単ですが、一部ツールではどうしてもできない点もあります。それらをどうするかも含めて決めたらスタートです。サイト制作を外部に任せている場合は、アクセシビリティ対策の為に+αの制作費用を要求される場合もありますので、制作会社との契約や予算、チェックエラー時のフローなどを決めて運用を開始します。ここでもミニマムスタートから実施し、少しずつ軌道修正していくことで自社サイトにあった対策を実施してくことができます。また、続ける事も大切です(弊社では運用コンサルティングも行ってますし、制作運用も行ってます。お気軽にご相談ください。)。

後半、宣伝が増えてしまいましたが、アクセシビリティは経験者に聞くのが最も手っ取り早いですし、結果、コストを安く抑え、期間を短くすることができます。是非、弊社のサービスもご利用ください。まずは気になった方はお気軽にご相談ください。 → http://www.vccorp.net/

それでは。